【売れるしくみのコラム No.35】病院のマーケティング
病院の経営については意外に関心が薄い。
それは、患者も医師もである。
これは日本の皆保険制度の数少ないデメリットのひとつかもしれない。
患者側では
「病院は自分の町にあって、当たり前」
「病院が簡単に潰れるとは思わない」
「もし、ひとつの病院が潰れても他の病院があるから大丈夫」
と思っている人も多いだろう。
医師も
「いい診察や治療をしていれば患者さんは来る」
「高齢者が増えているので、病気になる人は増える」
「現代人は生活習慣に課題があり、病気は絶えない」
と考えており、病気に対峙することに力がはいる。
その結果、病院の経営やマーケティングへの関心は薄い。
むしろ、経営やマーケティングに関心を高めることへの抵抗感があるかもしれない。
しかし、地域社会は変化しており、少子高齢化、地方経済の縮小、限界集落の増加という現状を見れば、皆保険制度、社会保障制度も万全ではない。
そうした地方のなかで病院がなくなる事例も多い。1年間で300件ペースで廃業しているとのデータもある。
患者の減少、看護師の減少、医師の減少などが原因だ。
全国で見ればバランスは取れるのであろうが、それぞれの地域で見ていくと事情は複雑である。
ひとつの病院が廃業することによって、その余波が近隣の他の病院に負荷となり、過重な労働によって維持が困難になるといったケースもある。
都心部では、逆に、患者数が増え続けることで医師不足が深刻化していくが、次の担い手がなかなか見つからない。
こうした局所的に起こるアンバランスが社会制度の維持をより難しくしている。
このように考えると、マーケティング視点でのサービス提供のあり方や、経営視点での資源の配分方法の検討は非常に重要であることがわかる。
しかし、残念ながら、医療に対する妄信的な意識が実態に関わることをタブー視しているようにも感じる。
もちろん、日本の医療の水準は非常に高く、現時点で強く憂えるものではない。
医療は大きな社会システムの上になりたっており、一朝一夕での変革が容易ではない。
だからこそ、経営やマーケティングの視点からも見直していきたい。
北林弘行
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